不動産の表示に関する登記の専門家である土地家屋調査士。
合格率9%台の難関国家資格にも関わらず、インターネット上では「食えない」「仕事がない」「年収が低い」という噂?情報?があります。
まず結論から「土地家屋調査士は仕事があります」「土地家屋調査士は食えなくありません」「年収は500万〜1000万円です」となります。
年収に関しては、【土地家屋調査士の年収】低い?1000万円?など噂の真相を解説で紹介しておりますので、本ページでは「仕事がある」「食えなくない」について説明していきます。
土地家屋調査士は仕事がないを数字で否定
土地家屋調査士には表示に関する登記という独占業務があります。
日本土地家屋調査士連合会で発行している「土地家屋調査士白書(2020年7月発刊)」によると、平成30年度は「不動産登記が年間1200万件」「土地の表示に関する主な登記が年間150万件」「建物の表示に関する主な登記が年間100万件」となっています。
この表示に関する登記の数は平成21年〜平成30年ではほぼ横這いで推移しており、仕事量は減っておりません。
地域差はあるものの全国的に見れば、まだまだ土地家屋調査士の仕事がなくなることはありません。
土地家屋調査士の廃業率は高い?低い?
土地家屋調査士は全国に約16,000人おりますが、毎年3%前後(約500人前後)の方が死亡や廃業が理由で土地家屋調査士ではなくなっています。
廃業率(廃業や死亡による取消率)3%は平成21年〜平成30年の10年間ではほぼ横這いです。また全国約16,000人のうち、2割の方が70歳代以上で土地家屋調査士を続けています。
土地家屋調査士は不動産の表示に関する登記の専門家ですが、登記だけではなく、関連したフィールドワークも多く体力のいる仕事であることから、廃業率3%の多くは死亡か体力的な面から辞められた方で、「仕事がない」「食えない」からではないと思われます。
ちなみに土地家屋調査士の人数は平成12年の18,699人をピークにこの20年で1割程減少して、この減少傾向は続くと思われます。
その理由は、土地家屋調査士試験の合格者数が年々少なくなっており、それに伴い新規に土地家屋調査士になる方(新規登録者)の人数が減っているからです。
※土地家屋調査士試験は合格者数が決まっている相対評価の試験ですので、意図的に減らしていると考えられます。
仕事量は変わらないのに、ライバルである同業は減っているという状況で、仕事がないという理屈はありません。
土地家屋調査士は食えないのか
土地家屋調査士に仕事があることは前章でご説明しました。
また土地家屋調査士は全体の95%が独立開業の為、正確な数値は分かりませんが、年収は500万〜1000万になります。(※詳しくは【土地家屋調査士の年収】低い?1000万円?など噂の真相を解説を参照)
ですが、当然、地域差や営業力により獲得できる仕事量は変わります。
さらに2003年に法務大臣認可であった報酬規定が廃止され、個々の事務所によって報酬を決めることができるようになり、業務の一部をシステム化することで効率を上げ、報酬価格を下げることにした事務所も多くなりました。結果、価格競争もおき、事務所の営業力はより重要になりました。中には、『個人事務所』としては、仕事がなく食えない方もいたかと思われます。
※近年もオンライン登記申請の普及やドローンを活用した測量など業務効率に向けたテクノロジーの活用がされております。
土地家屋調査士法人に勤める
個人事務所でうまくいかない場合、土地家屋調査士法人に勤めるという方法があります。土地家屋調査士法人はこの10年で倍増しており、そのほとんどが求人を出しております。年収も「実務経験あり」「土地家屋調査士の資格あり」であれば、500万以上が望めます。
調査士法人であれば、営業力はもとより、CADソフトやトータルステーションなどの器具、フィールドワーク時の補助者といった業務には欠かせないものを共用することができます。
司法書士や測量士など他士業のグループ法人に勤める
司法書士事務所、測量事務所などの他士業の事務所やグループに勤めるという方法もあります。
士業専門の転職エージェントや大手予備校のHPにも、土地家屋調査士に関する求人が掲載されていますので、ご活用ください。
土地家屋調査士として食べていくには
土地家屋調査士として食べていくには、営業力、人脈が必要になります。
ですが、大手不動産会社からの依頼などは、既に関係性のある土地家屋調査士事務所が請け負うため、これから新規参入する方には障壁が高いかと思われます。そこで2つの方法を紹介します。
WEBによる集客
一般の方から仕事を請け負うために、WEBによる集客がおすすめです。一般の方が参考になる情報をコラムして、そこから事務所の紹介をします。既にこれらに取り組んでいる個人事務所や土地家屋調査士法人もいます。最近では、土地家屋調査士と一般の方をマッチングさせるサイトもありますので、そちらに登録するもの良いかと思います。
ダブルライセンスは行政書士がオススメ
また業務範囲を広げるだけでなく、人脈づくりの為のダブルライセンスもオススメです。
資格予備校は、司法書士、測量士、建築士、行政書士、宅建士、マンション管理士、管理業務主任者など、様々なものをオススメしています。
ですが、土地家屋調査士をメインにするのであれば業務範囲を広げる必要はありません。独占業務がありますので、仕事内容はそこに注力すべきです。そのため、オススメなのが行政書士です。
行政書士は官公庁に提出する書類の作成や手続きを代理するため、業務範囲がとても広く、分野毎に専門とする行政書士がいます。また、専門分野によって、行政書士が抱える客層はさまざまです。
行政書士は専門分野以外の相談や業務が発生した場合に、他士業や他の行政書士事務所へ仕事を紹介する、依頼する機会があります。行政書士資格を持っている土地家屋調査士が割といますが、その逆はありません。そのため、行政書士間のネットワークに入ることによって、土地家屋調査士業務が発生した場合に、仕事を依頼して貰える可能性が高くなります。
さらに行政書士の資格があれば、「開発許可申請を代理する」「相続時に発生する遺産分割協議書を作成する」「農地転用の許可・届け出をする」などができるようになり、そこから土地家屋調査士業務に繋げることも可能です。